掃除機をかけることによる気付き

掃除機をかけるのは面倒くさい。

でもかけてしまえば家の中がきれいになることは誰もが知っていることだろう。

しかし、普段掃除機をかけない人がたまに掃除機をかけることで得られる気付きは

意外と知られていないのではないか。

 

あらためて掃除機をかけるメリットは何か、と考えてみたときにまず浮かぶのは

もちろん家の中がきれいになることである。これは疑いの余地がない。

そもそも掃除機とは電気の力を利用して吸引力を人工的に作り出し、

その力によって埃などを容器内に取り去るものである。

掃除機を利用することで我々は手軽に部屋の埃などを排除することができるのだ。

こうも便利な掃除機をかけることが面倒くさいとはどういうことなのか考察してみる。

 

(1)掃除機の準備

 まず掃除機を引っ張り出してくるという手間が挙げられよう。

 細かいことを言えば引っ張り出してきた上に適切な場所に配置し、

 電源ケーブルをコンセントのところまで引っ張り出して接続させる必要がある。

 しかもただ接続させるだけならば比較的簡単かもしれないが、掃除機をかける範囲が

 広範囲に及ぶことも考慮すると電源ケーブルを最大限引っ張り出したうえで

 接続させるべきなのだ。5cmほど引っ張りだして接続させたのでは

 ほとんど身動きがとれず、狭い範囲しか掃除機をかけることができない

 という厳しい現実に直面するのだ。

 

(2)やる気

 掃除機の準備以前に、「よし、掃除機出して掃除しよう!」という気持ちが

 なかなか起きないものである。これは掃除機の準備に限ったことではない。

 学校だって、仕事だって、面倒と思っても行ってしまえば「まあ頑張りますか」

 という気持ちになることが多いのではないか。

 つまり学校や職場まで行くまでが大変なのだ。

 

ざっくりと上記2点が掃除機をかけるのが面倒といわれる要因なのではないか。

しかし普段掃除機をかけない人がこれらを乗り越えることで得られるものがある。

 

第一に、家族の会話が増えるということだ。

パートナーに「おれ偉いから掃除機かけたんだよ!」とでも話せば

「うそ、ありがとう!」や「当たり前でしょうに」「当たり前だなんて冷たいな~♪」

といったようなほほえましい家族の会話が生まれることがあるだろう。

そしてある部屋を掃除する場合、まずは入口より侵入してその周辺を掃除するだろう。

そこから徐々に部屋の中心を目指していくのか、はたまた左右どちらかの壁沿いに

掃除機を走らせていき外堀を埋めていくのかという決断を迫られる。

今回は中心を攻めたうえで部屋の端っこへ攻めていくスタイルを想定する。

部屋の隅に掃除機をかけると、部屋の中心に比べて埃が溜まっている箇所を

発見することもある。こんなとき「へえ、意外と部屋の角っこは埃がたまっているな」

ということに気付く。「部屋の角っこに意外と埃がたまってたね」などと

軽く伝えてみると「あれ、適当なのがばれちゃった、てへ」みたいな

これまたほほえましい家族の会話が生まれることもあるだろう。

 

第二に、自分の家は意外と広いのだなと再認識できることがある。

端っこまで掃除機をかけるわけだからほぼ部屋の四隅は制圧することになる。

その際に「意外と壁にたどり着くまでが長いな」と感じるのである。

家の大小は問題ではない。普段認識している空間と実際の空間にはギャップがある

ということを再認識することがなんとなく新鮮なのだ。

さらに部屋の端っこまで掃除機をかけていると意外と「ここもどかして埃をとろう」

なんてスイッチが入ってすごくきれいにしたくなることもある。

せっかく掃除機をかけはじめたのだから中途半端はいけないという心理が働くのだ。

スイッチが入って部屋の端っこ、ソファの下など普段あまり目にしないところまで

掃除機をかけていく過程で「あ、ないと思っていたらこんなところにあったのか」

という思いもよらない発見があることもあるのだ。

 

第三に、家族の会話ネタが増えたり自宅の広さを再認識することによって

「こんなことに気付く自分はいまゆとりがあるな」と自覚することができる。

ゆとりがあると自覚できることは意外と大切なことである。

多忙な日常を送っている人が、時にはスピードダウンすると見えてくるものがある。

電車の特急ではなく各駅停車に乗った際に「こんな景色があったのか」

という気付きが得られることがあることに似ている。

こういう自覚がもし持てない場合は、情報に対する感度が下がっているという

黄信号であると思った方がよい。

 

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と、掃除機をかけてふと思ったりした。

とりあえずは「一応ちょっと掃除してみるか」程度でもよいので、

掃除機を引っ張り出してきて電源ケーブルを接続し、スイッチを入れれば

掃除機がかけられるというところまで頑張ってみるのがよい。

もちろん比較的容易に移動が可能な家具などを一時的に移動させたうえで掃除機を

準備するのが望ましいが、完璧主義は時にスピードや効率性を損なうという

欠点があるのでまずはハードルを低くすべきである。

軽い気持ちでまずは掃除機をかける最低限の準備をしてみることが肝要である。